ハート泥棒

しばらく俺の目を見た後、樹理は黙ったまま頷いた。


今でもハッキリと思い出せる…涙で潤んだ瞳。


あの時、樹理はいったいどんな気持ちだったんだろう?


1番に考えなきゃいけなかったのは、アイツの気持ちなのに…。


自分の真下にいる樹里を見てたら、ますます止まんなくなる…俺の湧き起こる衝動。


俺の瞳に映る…白くキメの細かい肌。


それにピンク色のふっくらした唇に…長くて柔らかそうな髪の毛。


俺だけのモノにしたいって気持ちで無我夢中で、指先と唇で樹理の全部に触れていく。


その間、一言だけアイツに『怖いなら言って?』って確認したけど、バカな俺は最後まで気がつかなかったんだ。



樹里の気持ちと自分が本当に…奪いたかったモノを。

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