ハート泥棒
樹里:side
ドサッ……『キャッ!』
今、あたしの目の前にあるのは
今までに見たことがない…海斗(かいと)の表情。
『樹里(じゅり)、いい?』
突然、そんなこと聞かれたって…なんて答えていいかわかんないよ。
ほんの数分前まで、海斗の部屋であたし達は机の上に参考書を広げて、一緒に試験勉強をしていたはずなのに…
あたしの体は、硬いベッドのマットの上でガチガチに固まっていた。
その緊張の固まりを海斗が四つん這いの体制になって捕えている。
この時、あたしは海斗のことが誰よりも大好きだった。
だから、目を潤ませながらも…首をコクンと縦に振っていた。