ハート泥棒
「樹里ちゃんのタイプじゃなかった?でもコイツ、いいヤツだからさ。とにかく、海斗が来たことだし、早くあっちに行って座ろうぜ」
なんで…なんで…?
その言葉ばっかりが、席に着いてからも頭の中をグルグルと回る。
「いつもは樹里もこんなにおとなしくないんだけね…」
口数少ないあたしをリカが慌ててフォローする。
なに喋っていいか…わかんないし、あたしは正面すら向けない状態。
「海斗も…普段はもっと喋るんだけど。樹理ちゃんがかわいいからキンチョーしちゃってんのかも」
潤くんも冗談ぽく笑いながら言ってるけど、黙り込んでいる海斗に困った様子だ。
自己紹介してから、何も喋ろうとしない海斗。
和哉くんって子の代わりって言っても、彼女が欲しくてここに来たんだよね?
あたしじゃ…問題外だよね。
って言うか、その前にあたしに会いたくなかったに決まってるか…。