ハート泥棒
「ちょっと一緒に来て欲しいところがあるんだ」
樹里にはこの時、それだけ言った。
樹里に会うちょっと前に、潤が思い出させてくれた…あの日の“約束”
それは、ずっと果たせないままになっていた。
ここで、もう1度会えたのだって…なにかの縁なら
あの日の“約束”を叶えたい。
そうすることで、もしかしたら何かが…変わるかもしれない。
それは樹里のためでもありながら…あれから前に進めないでいる自分のためでもある。
それから樹里は俺の真剣な表情から何かを読み取ったのか…
「…わかった」と言って黙って俺についてきてくれた。