ハート泥棒
4年前のいつかの帰り道のこと。
俺の腕に自分の腕を絡ませながら、樹里が甘えた声でしてきた…お願い。
『誰かが第2ボタン下さいって言ってきても、絶対にあげちゃダメだからねっ!』
『わかったって!さっきから何回も聞いたし。って言うかさ、誰も俺のボタンなんかキョーミないって!』
『海斗の鈍感っ!女の子がどれだけ狙ってると思ってんの!雑誌に載ってから他校生にまでチェックされてるんだからね!』
『お前が勝手に俺の写真…送ったくせに』
『…そうでした』
いつも言ってることと行動が樹里はめちゃめちゃだった。
まぁ…そんなところもひっくるめて全部、好きだったんだけど。
『とにかく式の後…あたしの名前書いてボタン渡してね!』
『…はいはい』
うちの中学に…伝わる“ジンクス”
第二ボタンの裏に2人の名前を書き合い…それを大切にずっと持っていたら──・・・