ハート泥棒
樹里の気持ちを全部聞いた俺は
───フワッ…
右手でボタンをしっかりと握ったまま、樹里を自分の胸の中に抱き締めていたんだ。
「あたしも…。グスッ…ずっと…海斗のことが好きだったんだと思う」
「なんだよ…それ。ずっと、もう俺のことなんて避けられてたし…嫌いになったって思ってたのに…」
「それは…あたしだって同じだよ」
こうなったのも…全部、あの日の俺のせい?
「今さらだけど、あの時ゴメンな。お前の気持ち、無視して…」
「謝らないでよ。どっちが悪いとかじゃなくて…“カラダ”に“気持ち”が追いついてなかったんだよ」
15歳の冬。
言葉足らずで、先に体を重ね合ってしまった2人。
あの時…必要だったモノが今ならわかる。