副社長は甘くて強引
2.嫉妬と涙

 陽斗と別れた翌日。耳もとで鳴り響くスマートフォンのアラームを止める。

 会社行かなくちゃ……。頭ではわかっていても、上下ピッタリとくっついたまぶたは言うことを聞いてくれない。

 このままじゃ遅刻しちゃう。

「よいしょっ」

 重い体を渋々起すと、出勤の準備に取りかかる。まずはトイレに行き、顔を洗い、歯を磨く。そしてクローゼットから白いシャツと黒のパンツを取り出す。どうせ会社で制服に着替えるんだから、出勤時の服装はどうでもいい。

 跳ねた髪の毛を直す時間はない。ロングヘアをバレッタでひとつに束ねる。メイクはパパッと五分で完了。朝食はもちろんパス。冷蔵庫からパックの野菜ジュースを取り出すと、ストローをさしてズズッと飲み干す。

 慌ただしく準備をしていると、陽斗と付き合い始めた頃に買った色違いのマグカップが目に留まる。もうこれは捨てよう。そうだ、陽斗の歯ブラシも……。

 なんで私、こんなに冷静なんだろう。もしかして陽斗のこと、そんなに好きじゃなかったのかもしれない。
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