副社長は甘くて強引

 フワフワと膝丈で揺れるスカートの裾がくすぐったい。副社長は私のドレス姿を見て、なんて言うんだろう。

 不安と期待を胸に抱きながら、彼が待っているというショップの応接間に向かった。

「樋口様、お待たせいたしました」

 女性スタッフが応接間のドアを開ける。副社長はソファに座り、長い足を組んでコーヒーを飲んでいた。その姿は映画のワンシーンのようにさまになっている。

 その彼が選んだのは、真紅のフレアドレス。七分丈の袖は総レース、身ごろは光沢のあるサテン地。ウエストリボンがポイントでかわいらしくもあり、清楚な雰囲気もあるドレスだ。

 私のドレス姿を見た副社長は、ソファから立ち上がると体の前で腕を組む。そして爪先から頭までゆっくりと視線を移動させた。

「ん、いいな」

 彼の口から出たのは、ノリさんのサロンで変身した私を見たときと同じセリフ。短い褒め言葉は、二度目でもうれしくて恥ずかしかった。

「ありがとうございます」

 トクンと脈を打つ鼓動を自覚しながら、副社長にお礼を言った。

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