副社長は甘くて強引

「金についてとやかく言う女は初めてだよ。それに俺が指輪をプレゼントしたというのに、キミはちっとも喜んでいない」

 彼は不満げにそう言うと、腕組みをする。

『金についてとやかく言う女は初めてだよ』って、それは今まで多くの女性にジュエリーをプレゼントしてきたってこと?

 なんとなく、嫌な気分……。

 でもこんなに素敵な指輪をプレゼントしてくれたというのに、代金を気にするあまり素直に喜べず、お礼を伝えなかったことは申し訳ないと思った。

「そんなことないです! フォーエバーハートの指輪は私の憧れだったし、とてもうれしいです」

 右手を軽く掲げてみると、ハートの形にカットされたルビーがレストランの照明に反射してキラリと光を放つ。

 綺麗だし、かわいい……。

 長年の願いが叶い、頬が勝手に緩んでしまう。

「初めて会ったときも、キミは赤いドレスを着ていたね」

「はい。でもよく覚えていますね」

 誕生日パーティーで一度しか会ったことのない私を覚えていただけでも十分驚いた。それなのに、赤いドレスを着ていたことまで覚えているなんて……。

 指輪から視線を移すと、副社長の口もとに笑みが浮かんだのが見えた。

「まあね。キミには赤が似合う」

 彼の短い褒め言葉はただのお世辞だと頭では理解していても、勝手に乱れる鼓動を鎮めることができない。

 単純な自分が恥ずかしくて、副社長の顔がまっすぐ見られない。

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