副社長は甘くて強引
5.社員教育の成果
耳もとで鳴り響く音で目が覚める。時刻は午前七時。
まだ眠い。あと少しだけ寝よう……。
上下のまぶたがくっつきそうになったそのとき、いつもより三十分も早くアラームをセットした理由を思い出す。
そうだ、二度寝なんてしていられない。出社の準備をしなくちゃ。
勢いよくベッドから起き上がる。その際、ハンガーにかけた真紅のドレスが目に留まった。
昨日の出来事は夢じゃない。
その事実をさらなる確信とするために、ドレッサーの前に駆け寄る。
髪の毛を切った自分の姿を鏡に映す。そして引き出しの中から水色のジュエリーケースを手に取った。カパッと蓋を開けると、フォーエバーハートのルビーの指輪が輝きを放っている。
やっぱり夢じゃない。
指輪を右手薬指にはめると手を掲げて、その美しさに見惚れる。
あ、いけない。三十分早く起きたのは、身なりをきちんと整えるためだった。
我に返った私は顔を洗って朝食を済ませると、ドレッサーの前に座った。
透明感を意識してファンデーションを塗り広げる。眉はナチュラルに、アイメイクは濃すぎないように慎重に。チークはふんわりとかわいらしく、リップはぷるぷる潤うように……。
しばらくの間、品格を意識しながらメイクに奮闘するのだった。