副社長は甘くて強引
「この指輪はフォーエバーハートシリーズといって、ハートジュエリーのオリジナル商品なんです。指輪にネックレス、ブレスレットにピアスと、ラインナップも充実しております。ご案内いたしますので、こちらへどうぞ」
「はい」
ペリドットの指輪をしていたときには一度もなかった展開に心が躍る。そしてフォーエバーハートシリーズに興味を持ってもらえたことがとてもうれしい。
これも副社長の〝お守り〟効果だ。
指輪のご利益(りやく)に感謝しつつ、フォーエバーハートシリーズが並ぶショーケースにお客様を案内した。
「ありがとうございました」
ショップの外に出て、お客様を見送る。彼女が購入してくれたのはフォーエバーハートの指輪。ゴールドとピンクサファイアの組み合わせがとてもキュートな商品だ。
指輪が売れたのは単純にうれしい。でもそれ以上に、お客様の満足した笑顔が見られたことが一番うれしかった。
この喜びを副社長に伝えたい。それに、昨日のお礼も……。
そこでふと思う。副社長は、今頃どこでなにをしているのだろうか……。今日は東京本社に出社しているの? それとも外出中?
私、彼のこと、なにも知らない……。
今になってハートジュエリー副社長という肩書きを持つ彼が、遠い存在だと実感するのだった。