副社長は甘くて強引
「副社長はどうして私に親切にしてくれるんですか?」
デキの悪い社員を教育するにしては、少しばかり度を越していると思う。
「気になるんだ」
「はい?」
「五年前からキミのことが気になっていた」
「……っ!」
五年前と聞いて思い出すのは、陽斗のお兄さんと一緒に出席した副社長の誕生日パーティー。そんな前から私のことを?と思うと同時に、どこをどうしたら私のことが気になるのかわからなかった。
だって私は綺麗じゃないし、品があるわけじゃない。しかもズボラだし女子力も低い。残念ながらハートジュエリーの副社長である彼が気にかけるような女ではないと、自信を持って断言できてしまうのだ。
「意外に一途なんだと自分でも驚いている」
「……」
頭が混乱して、返す言葉がみつからない。
「メールする」
「えっ?」
「毎日は無理だがメールする」
なんの脈絡もない副社長の言葉に驚いたのは、ほんの一瞬。異国の地に行ってしまう彼とつながりを持てると思うと、頬が勝手に緩みだす。
「はい。私も……します」
「ああ」
彼の低い声を聞いた瞬間、胸がキュッと波打つのを自覚した。