副社長は甘くて強引
7.同期の誘いと再会と誤解

 十二月の売り上げは順調。この調子だと最下位脱出も夢じゃない。しかし、残業続きの毎日に心も体もいささかバテ気味だ。

 そんな私の癒しは、副社長とのメール。

 記念すべき第一弾のメールは【到着】という短いタイトルとともに、活気あふれるタイの街並みの画像が送られてきた。

 次に送られてきたのは【タイカレー】というタイトルと少し辛そうなグリーンカレーの画像。その後も【トムヤムクン】【ガパオライス】といったような、タイ料理の画像ばかり届く。

 もしかしてこれは、食いしん坊な私へのあてつけ?

 メールでも意地悪な彼が憎らしい。

 それでも忙しい中、こまめにメールをくれることをうれしく思った。



「隣、座ってもいい?」

 社員食堂でトロトロ玉子のオムライスを食べていると、同期の佐川に声をかけられる。

「うん。どうぞ」

 佐川はから揚げ定食がのったトレイをテーブルに置く。そして私の隣の席に腰を下ろした。

「ああ……疲れた。大橋は体調大丈夫?」

「うん。平気だよ」

 私のことを気にかけてくれる佐川の気遣いに、心がホッと和む。

 今日は十二月第三週の土曜日。一週間後にクリスマスイブを控え、忙しさはピークを迎えている。本来の昼休憩の時間は一時間。しかし今日は食事が終わったらすぐにショップに戻ったほうがよさそうだ。

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