緋女 ~前編~
新しい学校
城での毎日、彼らの決意。
王子に名を告げられて、私は正直混乱した。
私に結婚は考えなくてもいいとか言って、でも名前を教えてくれたり。
王子の力になって夢の続きが見たいのは本当だけど、どうしたらいいか全然分かんない。
告げられた後、混乱した私に王子___否、ピーン・ライサーは言った。
“明日も同じ時間、この場所で待ってる”
その言葉と私を置いて行ってしまった彼の背を、呆然と見送った。
「いったい、どういうわけ………?」
その時私は気がつかなかった。
ただの猫にしては大柄な、静かにたたずむその影に。
やがてそれは来た時と同じように音もなく去っていった。
「レヴィア様」
しばらくして、そう私を呼ぶ声がした。その声の主は振り返らなくても分かってる。
だから、少し不機嫌な声をあげる。
「ケイ、少し遅かったんじゃない?」
これは完全な八つ当たりだ。昨日は邪魔者扱いしたくせに今日はもっと早く来て欲しかったと思っている。
まったく、ご都合主義も過ぎるというものだ。
それだからケイも怒ってるのか呆れてるのか、これに沈黙で返す。
先にこの沈黙に耐えられなくなったのは、私だった。
「ごめん。……思ってもないことを言ったわ」
でも、それが間違え。
「そうか」
私は彼を怒らせるにかけて天才だ。
やっぱり都合のよい私だから、そんなこと吹き飛んで後先考えず彼に言葉を浴びせてしまった。
「王子とずっと一緒がいいなら、俺がいるだろ?」
その妙な言い回しに私は首をかしげることも出来なかった。
なぜなら、背後の彼が台詞と共に私にきつく抱きついて来たのだ。