緋女 ~前編~
「………レヴィア様」
「うん?」
「好きです」
「うん」
「……………」
好きと言った彼は、また黙ってしまった。
王子が好きだという私への肯定なのか、王子との仲を取り持つ私が好きなのか。
まあ、どっちでも同じか。
でも、そうか。そういうことなのか。そっか、そっか。
少しショック___。
「誰にも言わないから、ね」
なぜか、声がかすれたのに気づかないふりをした。
しばらくして彼はぽつりと言った。
「レヴィア」
「なに?」
今のケイはおかしい。
なんで私の名を必死に呼ぶの?
「結局、俺に惚れたのか?」
「___いいえ。言ったでしょ、もう誰も本気で好きになったりなんかしない」
ああ、かすれた声が直らなくて困る。
王と会ったときの言葉を繰り返す私の目頭が今だけ熱い。
大丈夫、
大丈夫。
まだ引き返せる。
「じゃあ」
ケイが切なげな瞳をした。
なんで?
分からない。
「んっ」
分かるのは彼の熱い唇の感覚だけ。
「俺に早く堕ちてくれ」
そんな瞳に見つめられたらどうしていいか分からない。
本気だと勘違いする。
彼は私の手を握って飛んだ。
私はその手を握り返さなかったが、振りほどきもしなかった。
ただ、大丈夫と繰り返した。
涙がこぼれ落ちたのは誰も見てない。
影だけがこれを知る。