緋女 ~前編~
「なんでっ……」
それ以上は声にならなかった。
「知らなかったよ。言ってみただけ。でも、やっぱりそうなんだ」
「いや、私はケイのことそういう風に好きじゃないわ」
「じゃあ、ケイがレヴィアのこと好きなんじゃない?そういう風に」
「ちょっと待って。誤解してる」
「いいよ。隠さなくても」
私の言葉を全部拒絶するかのように、ライサーは言った。
「じゃあ、質問変えるね」
「はっ?」
「レヴィアは僕のこと好き?そういう風に」
「………ライサー」
「僕はレヴィアのこと好きだよ。そういう風に」
いつかは言われると思っていた言葉なのに、何も答えを用意していなかった私。
どこかで思ってた。
そのうち私なんか好きじゃなくなるって。
今思えばひどい話だ。
人を好きになるのは簡単だ。でもそれを表現するには勇気がいる。
好きになった人に拒絶されるのがこわいから。
でも、それでもライサーは全身でいつも私を好きだと言ってくれていた。
私はそれの一部しか返せないのに。
ケイの言葉が蘇る。
“いい加減、自覚しろ”
“王子はお前が好きなんだ。少しは気をつけろよ”
それに対して私はなんて無責任に答えたのか。
“分かってるから、怒んないでよ”
そりゃ、怒りもするよね。
私はライサーには正直に話さなければいけないことを悟った。