緋女 ~前編~
「私はライサーをそういう風には好きではない」
私のその一言を予想していたかのように、ライサーがうなずく。
ああ、なんて顔をさせてるんだろ。
でも、もしライサーを好きになっていたら、ケイにこんな顔をさせていたんだろうな。
私は誰も好きになったらいけない。
もう誰にも本気にならない。
母がいい例なのに誰かを好きになるなんてバカだった。
「でも、ケイを好きになることもないわ」
彼らに何度でも繰り返そう。
私が本心でそう言えるようになるまで。
「言ったでしょ?私はもう誰にも本気にならない」
「だけど__」
「ケイとのキスはただの賭けだから」
「レヴィア………」
「それにね、私、ケイが本気で好きな人知ってるの」
「えっ?」
「ケイが好きなのも私じゃない」
「まさか___」
信じられないという顔のライサーに私は笑った。
「そうなのよ。まあ、誰かは教えてあげられないけど」
大丈夫。
嘘は隠し通せば、本当になる。
「話を戻しましょう、ライサー」
私はそう言って彼に言った。
「私は本当にライサーに追いつくために、しばらくここを出るわ」
「えっ?そんなの許可が下りるわけない」
「ケイの提案でもあるの」
「はっ?……駆け落ちなの?」
「どうしてそうなるの?ケイの欲しいものは、外じゃなくてここにあるわ。私一人で行くの」
「駄目だっ」
「なんで?」
「なんでって、レヴィアはこっちに来たばかりだし、外は危ないよ」
「大丈夫よ。学校に行くだけだから」
「………は?」
ライサーのすっとぼけた声が庭に響いた。