緋女 ~前編~
「隠してこちらに来たのかもしれないが、俺が発見した時にはその色だった。一発でわかった。分かりやすくていいな、その髪は」
取り繕うこともなく立ち上がった彼はベットにどっかりと座り込む。
「さて、どこまで知ってるのか教えてもらおうか?」
「………待って。この髪は違う。もともとはちゃんと黒よ。あなたと同じ」
「俺の髪は黒………か。そうか。ならそういうことにしておこう。今は」
「今は?」
意味深な言い方に思わず口をはさんだ。だが、その言葉にはなんの返答もない。
「シュティ・レヴィア、なぜ帰ってきた? 目的はなんだ?」
帰る?
私の帰るべき場所はもうない。
大体こんなところ知らない。人を寝かせておいて、今更ここにいることを責めるなんて、
「あなた、新手の詐欺師なの?」