緋女 ~前編~
その声に首をかしげた。
「あれ?……いってなかったっけ?」
私のこの言葉に目を見開いた後、大きくため息をつくライサーは少し拗ねた声で言う。
「聞いてない。別れの切り出しだと思ってた」
「あー、ごめん。うん、寮に入るから週末しか会えなくなりそう」
「あーーーっ」
「なっ、なに?」
突然叫び出したライサーに驚いた私。
それを怨めしそうに見ると、
「なんでこんな焦って告白したんだろ」
なんて言い出した。
「その話は終わりにしない?」
「ひどい」
「ごめん。でも、早く嫌いになった方が楽よ?」
「もっとひどい」
「あのねー」
「だって………本気で嫌いになれるんだったら、とっくにそうしてる」
それは私。
二週間たっても、ケイの唇の感覚は消えない。
「そう、ね。悪かったわ」
「うん」
なんとなく沈黙がこの場を支配した。
また、二つの太陽が東西に別れて沈もうとしている。
ここの夕焼けは不思議だった。
オレンジの空と青の空が交ざりあった中間色。
最後まで、どちらに染まることもない空。
「ねえ」
「なに、レヴィア」
「私ね、魔法が上手くならないの」
「えっ、レヴィアが?」
「うん」
「___そんなに悩んでることあるの?」
何の脈絡もないライサーの疑問に私は戸惑いつつ答えた。
「うん。あったけど解決した。なんで?」
「じゃあ、今使ってみなよ」
「えっ?」
ライサーは私にさも当然のことのように言った。
「影はもう一人の自分であり、魔力の源なんだから」