緋女 ~前編~
「ごちそうさま」
彼女がシチューの皿を空にした。俺もクロワッサンを食べ終えていた。
間接キスなんて意識したこともないのに、ほぼやけくそで食べた自分が怖い。
「さあ、何から話してくれるの?」
彼女は前屈みではなく、ソファにふんぞりがえった。
この彼女の質問の答えは俺が昨日のうちに考えていた。
「魔法を解禁しましょう」
「……分かった、どうすればいい?」
なぜ俺が彼女の魔法を拘束していたのかは問わないのに気づいて、俺の方が驚いた。
「俺が……隠していた理由は気にならないのか?」
最近は彼女に対して無意識に砕けた物言いになってしまっている自分。
それに気がついた時には遅くて、彼女はその時大半は泣きそうになっているか、怒ってる。
まあ、別に彼女はとがめない。だからいいんだろうけど、なるべくしないようにとは思っていた。
「私がケイが一度でも私の首を絞める理由を聞いたことあった?」
「……なかったか?」
あっ、と思った時には遅い。
「あったかもねっ!」
彼女が怒り出した。
今日はもともと機嫌がよろしくない。それは起きたときに承知したが、飯の後怒らせるのは相当だ。
「申し訳ございません、わたくしの思い違いで」
俺は丁寧な言い方で謝った。
「思ってもいないくせに。いいわよ、理由を言いたいなら聞いてあげる」
だんだん、機嫌が悪くなっていっているのは気のせいだろうか。
そんな中では言いたくない台詞だったが、今言わない方法はないように思えた。
「では」
なんとなく断りをいれて喋った。
「わたくしがレヴィア様の魔力を止めていたのは、レヴィア様の魔力が強いと予測されるからです」