緋女 ~前編~
嫌いな学校、出逢った少年
「着きましたね」
ケイが言った。だが、学校らしいものは見つからない。
王子と別れて一週間が経った。
あれから一度も会わずにここまで来たけど、大丈夫かなと心配していたら、ケイは大丈夫ですって言っていた。
この男は出逢った時からずっと不器用で少し意地悪だが優しい。なのにそのことに恐怖をなぜか覚える。
優しさが時々、信じられない。
根拠もなく、戦慄する。
そう、今の彼はどこか違う気がするんだ。
「どこにって言いたげですね」
「だって、どう見たってさら地じゃない」
「実は地下にあるんです、学校」
その暴露に開いた口がふさがらない。
「は?」
「でも、入り口がないんです」
「は?」
「というわけで、レヴィア様。魔力でこの地面ぶっ飛ばして下さい」
「………普通に考えて無理でしょう」
「いえ、大丈夫です。ゴルとシルもすっかり復活しましたし、ここ最近のレヴィア様の魔力の伸びは著しいものがございます」
「まあ、そうなんだけど」
よく分からないのだが、ゴルとシルがある日突然復活した。私も何を悩んでいたのか覚えていない。
ケイは、“まあいいではないですか復活したんですから”と言う。
「分かった。けど、失敗しても笑わないでよね」
「ええ」
「__だから、その面白いものを見る目しないで欲しいんだけど」
「何かおっしゃりました?」
「……いや、なんでも」
そう言って魔力を集中させる。
ここ数日のケイの指導もあって、だんだんコツは分かってきた。
全神経を集中させて、身体中の魔力を一点に集中。
そして___解放する。
「あっ、その前に」
「なによっ」
そののんきな声に発動させようとさせた魔力が散った。
「レヴィア様、名前は名乗らないで下さい」
「えっ」
「あと、カツラです」
そう言ってケイが何かかぶせる。元の髪はその中に収納された。
「なっなんなの?」
「仕上げは眼鏡です」
そう言って、分厚いレンズをかけられる。
「邪魔」
「まあ、そうおっしゃらずに」
ああ、よく最近見るようになった営業スマイルのケイ。
よく似合う、とか言うのかな?
「この眼鏡は翻訳機能がついてるんです。とても役立つと思いますよ?」
確かに、役立つ。
そう思うのに予想と違った言葉に苦しくなった。