緋女 ~前編~
「そうそう。当然ですが映像も見れますよ」
そうなのかと右手を耳から離して革手袋を見つめる。
「ただ見るんじゃ駄目です。こうやって、本を持つ感じで手と手をくっつけると、ほら」
指示通りにやると光ってなにやら浮かび上がった。
「あっ、これ校舎案内です。ちなみに貴女の教室はここ」
そうやって私の手に浮かび上がる地図の一点をさす。
「ありがとうございます」
とりあえずお礼を言うけど、こんなハイテクなもの使いこなせるだろうか。
あちらの世界では連絡を取りたい相手なんていなかったから携帯も持ってなかったし。
「あの、制服はどこで着替えれば?」
「向こうの進路相談室の個室が、施錠も出来るので安全ですよ」
「そうですか。あとは大丈夫ですかね?」
「はい、私から説明することはこれで全てです。何かあればお申し付けください」
人のよい笑顔。
それに別れを告げて、言われた通り近くの相談室の個室を借りる。
渡された制服をいざ広げてみると、
「……なんか、制服なの?」
フリルのスカートに、そのスカートより十センチほど長いジャケット。ピタリとしたニーハイ。
「落ち着かない………」
スカート妙に短いし。
「鏡はない、か。よし、気にしてもしょうがない」
個室からでて、手と手を合わせる。
「クラスに行ってみますか___」
正直、憂鬱過ぎるけど。学校なんて。
学校に良い思い出なんか一度もないし。
そんなにかからない所に自分のクラスがあることを恨めしく思った。
もっと遠く、着かなきゃいいのに。