緋女 ~前編~
「最初からこの国の一番には立てないことになってるんだ。それがおかしいんだから、偽物でもいいよね?」
「どういう意味?」
「またとぼけるつもりなのー?もう、それには飽きちゃったよ、僕」
「………」
私をシュティ・レヴィアだと思っている人は、みんなシュティ・レヴィアに優しくない。むしろ厳しい。なんでも知っていると思われている。
でもそれも私を知るまで。
私を知ったら、何も言わなくなる。
でも非女はいったいどんな人だったのか。
私と入れ違うようにして死んでしまったその人は__。
あれ?
この話はいつ誰に教えてもらったんだっけ………?
“彼女は___お前が還った日に亡くなっているはずだ”
この台詞は誰のもの?
「レヴィ?」
「あっ、ごめん。なんだっけ?」
ショウが呼んで私は現実に引き戻された。
ショウはまた鋭い瞳で私を見ている。その値踏みするような視線。
「__本当にシュティ・レヴィア?」
この質問になんて答えれば良かったのだろう?
「私はヒメリアよ」
「またそれー?……波動は完全にそうなのに」
「波動?」
「うん」
口だけニコニコして笑ってない顔は答える気はなさそうだったので、それ以上は追求しなかった。
「でさあ、まあさっきの話の続きなんだけど、僕はこの国の一番になりたいんだよねぇ」
「うん」
「どう思う?」
一番になりたいというのはやはり王様になりたいということなのだろう。
この国は世襲の国王が立つ。
だから、当然王家の血を継いでいないと王座に手が届くことは決してない。
だからだろう。
ショウがここを好きだと言うのも。
届かないものが届くこの場所が。
偽物でも多くが本物と勘違いするようなこの空が。
自分を励ましてくれるのだろう。
「いいんじゃない?」
否定することもない。
嘘でも貫けば本当になる。
私は王子を知っているし、王になりたくないと思っても努力する王子に嫉妬と羨望を覚えた。
きっと、何もなければ彼は王になる。
目の前にいる少年、ショウはそれを知らない。
何もせずに王座に座ると勘違いしてる。
確かに、私がいた日本は国民の代表は間接的に国民が選ぶ。
だけど、ひどい人もたくさんいた。
王政は必ずしも悪いわけではない。