緋女 ~前編~
遠くで授業終わりのチャイムが聞こえた。
「__レヴィアは、大切に育てられたんだね」
珍しく名前をちゃんと呼んだショウに私は苦笑いを浮かべる。
「そうだったら良かったのにね」
「なにそれ。私は大切になんてされたことないって言いたいの?」
その言葉に私はうつむく。
「さあ。自分でも今じゃ分からない。少しでも愛してくれていたのか………なんてね」
あの日まではそれを信じてた。
でも、今ははっきり言えない。
こうして魔法を覚えて帰ろうなんて思っているけど、母にもう一度受け入れてもらう自信はないし、正直怖い。
そう思い始めるときりがない。
私は元の世界に帰る場所が残っているのだろうか? とか。
この世界でいつまでシュティ・レヴィアでいられるのだろうか? とか。
明日路頭に迷っても不思議ではない立場が私の心に焦りを生む。
「じゃあ、愛してあげようか?」
「は?」
ショウを信じられないものを見るように返り見た私。
二人の視線が絡み合う。
先にそらしたのはショウだった。
笑わない瞳で、肩と声を震わせる。
「冗談だよ。__でも、レヴィがどうしても愛してほしいっていうなら考えよーかな?」
「何があったとしても、ショウには頼まないわよ」
「そーお?残念だなー」
あー、私はこの瞳が苦手だ。
理由はない。けど、切にそう思う。