緋女 ~前編~


「………なんで、シュティ・レヴィアだと思うの?」


大体、私は本物じゃない。

見た目がとても似ているにしても、白銀の髪はかつらで隠れて分からないだろうし、瞳もこんな分厚い眼鏡をしていれば目立たないはず。

ケイがそうしたんだから、こんな早々に見破られるわけがないのだ。



それとも、予期していた?



分からない。


「なんでって、有名でしょー。十二年前の冬のことは。みんな後から記憶を消されてたから、細かい情報はまわって来なかったけどねぇ」



「十二年前の冬___」

ショウの言葉を繰り返す。



「うん。でも不思議なのは、みんなシュティ・レヴィアが還ってくることは覚えてるってこと。誰のどういう意図なのかさっぱり分かんないんだよねー、これだけは」


分からないもの全て気に入らないとでも言いたげなその口調。


「だから僕はいつになるか分からないけど、シュティ・レヴィアが還ってくるのを待ってた」


シュティ・レヴィアの帰還。

そういえば、ケイもそんなこと言ってた気もする。


「ずっと、君を待ってた」


その言葉はどこか浮かれたような響きを含んでいた。

私は再び戦慄する。


そうだ。ケイも言っていなかったか?



“よくぞお帰りになられました。非女の娘、シュティ・レヴィア様”


よくぞ___

それは、シュティ・レヴィアがいることで何か得なことがあるというわけで………。


そういえば私はなんで拾われたんだろう?

シュティ・レヴィアを探していた人がたまたま似ていた私を見つけただけ?

本当に、そんなたまたまが起こる?

そしてまた私はシュティ・レヴィアを探している人に会ってしまった。



でき過ぎている。




「__どう思おうと勝手だけど、本当に私はシュティ・レヴィアじゃないわ。人違いよ」



シュティ・レヴィアを名乗ることに初めて不安を覚えた。


ケイのいう通り、シュティ・レヴィアだと思われてはいけない。



「なんで?僕たちは敵じゃない味方だ」

「敵じゃない……?」

「そうだよ。レヴィを騙したり、殺そうとしてくる奴から僕たちは守ってあげる。レヴィ」

「そんな奴いない」

「確かにレヴィは強い。けど、味方は多い方がいいでしょ?」


ショウが何を言っているのかが分からない。


なんのための味方なの?

敵って誰?


「それとも、王座のことが気になるの?」


< 170 / 247 >

この作品をシェア

pagetop