緋女 ~前編~
「………なんで、シュティ・レヴィアだと思うの?」
大体、私は本物じゃない。
見た目がとても似ているにしても、白銀の髪はかつらで隠れて分からないだろうし、瞳もこんな分厚い眼鏡をしていれば目立たないはず。
ケイがそうしたんだから、こんな早々に見破られるわけがないのだ。
それとも、予期していた?
分からない。
「なんでって、有名でしょー。十二年前の冬のことは。みんな後から記憶を消されてたから、細かい情報はまわって来なかったけどねぇ」
「十二年前の冬___」
ショウの言葉を繰り返す。
「うん。でも不思議なのは、みんなシュティ・レヴィアが還ってくることは覚えてるってこと。誰のどういう意図なのかさっぱり分かんないんだよねー、これだけは」
分からないもの全て気に入らないとでも言いたげなその口調。
「だから僕はいつになるか分からないけど、シュティ・レヴィアが還ってくるのを待ってた」
シュティ・レヴィアの帰還。
そういえば、ケイもそんなこと言ってた気もする。
「ずっと、君を待ってた」
その言葉はどこか浮かれたような響きを含んでいた。
私は再び戦慄する。
そうだ。ケイも言っていなかったか?
“よくぞお帰りになられました。非女の娘、シュティ・レヴィア様”
よくぞ___
それは、シュティ・レヴィアがいることで何か得なことがあるというわけで………。
そういえば私はなんで拾われたんだろう?
シュティ・レヴィアを探していた人がたまたま似ていた私を見つけただけ?
本当に、そんなたまたまが起こる?
そしてまた私はシュティ・レヴィアを探している人に会ってしまった。
でき過ぎている。
「__どう思おうと勝手だけど、本当に私はシュティ・レヴィアじゃないわ。人違いよ」
シュティ・レヴィアを名乗ることに初めて不安を覚えた。
ケイのいう通り、シュティ・レヴィアだと思われてはいけない。
「なんで?僕たちは敵じゃない味方だ」
「敵じゃない……?」
「そうだよ。レヴィを騙したり、殺そうとしてくる奴から僕たちは守ってあげる。レヴィ」
「そんな奴いない」
「確かにレヴィは強い。けど、味方は多い方がいいでしょ?」
ショウが何を言っているのかが分からない。
なんのための味方なの?
敵って誰?
「それとも、王座のことが気になるの?」