緋女 ~前編~


そうか、と自分で聞いて頷くショウ。

「でもさ、そんな争いは後でもいいでしょ?………僕も王座は二の次なんだ。大事なのはさ、今正当じゃない血筋の者が王座に座っているってことだよ」

「正当じゃない?」

一度だけ会った王様。

威厳あって、堂々とした雰囲気は王そのもの。

正当じゃないとかそういうのはよく分からないけど、その風格は間違いなく王様だった。



そこまで考えて、不意に私は王子__ライサーが言った言葉を思い出した。



“僕は本当は王子じゃないんだ”


確かに、王子は半分血筋が違って自分は正当ではないと言っていた。

だが、王様が正当じゃないとは一言も言わなかったし、そう思っている節もなかった。 



「どういうこと?」



自然とこぼれた疑問。しかしそれに答えたのはショウではなかった。



「おしゃべりはそこまでにしておけ。俺はまだ納得してない」

固い声。

さっきまでとは一変して先生は真剣で、場には緊張が走った。

「なんで?どう考えても彼女はシュティ・レヴィアだよ。一族の名にかけて間違いない」

「俺はまだそうは言いきれない」


そしてショウから視線を外した先生がこちらを向いた。

目が合う。

目を背けることは許されない。



「シュティ・レヴィアを名乗るなら俺と勝負しろ」



その言葉は妙に受け入れ難かった。

たぶん、どこかでそれを拒否している自分がいるのだ。


「えっと………私、ですか?」

「そうだ」

一応の確認は暗に嫌だという意思も含めたのだが、まるで伝わってない。

それどころか、少しの気の緩みも許さない瞳が、怪訝そうにこちらを射抜く。


「__分かりました」


負ければ、シュティ・レヴィアではないと認めてもらえるのだろう。

なら、さっさと負けてしまおうではないか。


まあ………すごく痛そうだから、できればやりたくなかったんだけど。


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