緋女 ~前編~



自嘲するその声がなぜかとても悲しくて、私は思わず聞いてしまった。



「………ロチス・ケイを知ってるの?」



その言葉にショウは首を捻る。さっきまでのこちらが自然と臆してしまうような雰囲気はどこにもない。

「知らないよ。そいつがどうかした?」

「えっと……うまく言えないんだけど、私この世界の人じゃないの___」


私はそう言って、今までの覚えていること全部を簡単に話した。


自分でもなんでこんなことショウや先生に話しているのか分からない。

ただ、こちらに来てからのことを話していると少し違和感を感じる。

やはりショウの言う通り、記憶が一部消されてるのかもしれない。



でも、ケイがなぜそんなことを?



いや、ケイと決まったわけじゃないんだけど。

それでもだ。
___ケイじゃないにしても、私が記憶を消されてたら気づかないか?

だって、この数時間で二人はそれを感じた。



この世界で一番私を知っているのはケイ、貴方のはずなのに。


「………じゃあ、レヴィは自分はシュティ・レヴィアだと認識してないけど、その方が都合が良さそうだからそう名乗ってもいいと思って、そのケイだっけ?に言われるまま過ごしてきたの?」

私はそれに頷いた。

酷い言い方だと思う。
でも、そう言われればその通りなのだ。

私はそういう奴。だけど___だけど、違う。



「でもね、ケイは__」



何をこんなに必死になっているのか、突然の私の絞り出すような声が、聞いている二人以上に不思議なのは……私だ。

でも、頭を離れないケイの別れ際の言葉。





「ケイは、優しい人なの」


それだけは誤解してほしくなかった。


ケイは私の記憶を消した悪者みたいに言われてるけど、本当はそんなんじゃない。

私の記憶を消したなら、何か理由があって。
私の記憶が消されてることに気づいていて放っておいているなら、それも何か理由があるのだ。


なぜ、こんなにもケイを私は信じるのか。


理由はないけど。

 

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