緋女 ~前編~
入ってすぐ同じ制服の女子がその辺にたくさんいた。
これなら特に目立たないだろうけど、私は眼鏡とかつらをほとんど無意識に確認した。
「あーっ⁉」
突然その大きな声が上がった。学校ではよくあることだ。
大したこともないのに無駄に大きな声を上げる、こんな魔法学校も例外ではないらしい。
ため息がこぼれた。
ここの管理をしている寮長に聞けば、たいてい答えてくれるからそいつに詳しいことは聞けとレン先生には言われている。
とりあえずその人を探そうと思ったのだが、よくよく考えればどう探すのかという話だ。
またため息が出そう。
「ちょっと、そちらの方っ。昼過ぎにバス・ショート様と走っていた方じゃなくてっ?」
あー、さっき叫んでた人が何かをまた言っている。しかも前より近づいてないか。
「はぁ」
なんか嫌な予感。
「聞いてるのっ」
誰かが私の肩を掴んだ。
振り返ると女子寮だから当たり前なのだが、女の子が私をつかんでいた。
「………えっと、ご用件は?」
そう言いつつ、こういうミーハーで悪気のない女子が一番嫌いなのだと思ってしまう。
私はこういう自分の気持ちに素直で何でも出来てしまう人を、どーしても理解できない。
それはたぶん、私が本当はそうできたらいいのにと思っている、一番の証拠なんだと思う。
可愛くない私の、可愛い彼女に対する劣等感。
そんな感情を抱く自分は嫌い。だから、それを明らかにする彼女のような子も嫌い。
「用件ですって?だからバス・ショートと一緒に走っていたことについて詳しく聞かせてほしいだけよ」
「………人違いでは?」
今度ショウに会ったらどうしてやろうかと思いつつ、受け答える。
近寄らないでオーラはMAXだ。