緋女 ~前編~


「ははっ、何をおっしゃってるのー?こんな眼鏡している方なんて貴女くらいですわ」

あー、そうですか。そうなんでしょうね。

まあ、私もしたくてこんな眼鏡している訳じゃないんですけどねぇ?



心の中でそう毒づくも、私の長年の猫かぶりスキルを舐めてもらってはいけない。

「でも、私はバス・ショートという方を知らないんです。今日転校してきたばかりのもので」

下手に出る作戦だ。
こう弱々しく言えば大抵諦めてくれる。

「へー、そうだったの。どうりで見かけない眼鏡だと思ったわー」

駄目だ。
普通にムカつく。

「そうですか。あの私寮長を探してるんです」

私はさらにテクニックを使う。

必殺、話そらしだ。

「寮長?あー、転校してきたんですもんね。いいでしょう、私が案内してあげますわ。その代わりバス・ショート様の話をお聞かせくださいますか?」

うっ、手強い。

「えっ、そんな悪いですよ。そのバス・ショートさんのこと、本当に私知らないですし」

「とぼけちゃって、もう。大丈夫ですわ。私口だけはかたいんですのー?」

どこからどう見ても軽いだろ。

なんて、言わない。こうなったらもう早く案内してもらうに限る。

「本当ですかー?ありがとうございます」

「いえいえ。こっちよ」



それから何度となく彼女の質問をかわし、やっと寮長の部屋だと言う部屋にたどり着く。


彼女との別れ際、最後に思ったのは学年一位はだてではないということ。

想定していたことだけど、やはり学校は疲れる。

寮長に部屋を案内してもらっている間、ため息を吐いてしまっていないかは非常に怪しかった。

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