緋女 ~前編~
与えられた部屋に入った瞬間、制服のままぐったり横たわった。
部屋が個室だったのが唯一の救いだった。
これで、あの彼女と同室とか言われた日には立ち直れる気がしない。
そう思った時、手が震え始めた。
否、手袋が震えているのだ。
「なんなのっ」
やけくそに手に向かって叫ぶ。
『………どうかされましたか?』
「えっ」
手袋から聞いたことのある声が流れた。
慌てて耳に手をやると慎重にきく。
「えっと、ロチス・ケイ?」
『ええ、無事ですか?』
「………体わね」
『そうですか。良かったです』
聞きたいことはたくさんあるはずなのに、何からどう聞けばいいか分からない。
二人してなんとなく沈黙する。
「__この手袋こんな機能もあったのね」
とりあえず、思ったことを口にした。
そして口にした後に、ショウと連絡先を交換したのを思い出した。
これでいつでもショウともケイとも連絡がとれるわけだ。
「ええ、そうみたいですよ」
彼がそう返事をする。
沈黙。
「ケイは?なんか変わったことあった?」
『レヴィア様がいない以外は、いつも通りです』
沈黙。こんなのなんて答えればいいのよ。
「そっそう。えっと私は今日___」
どこまでしゃべればいいんだろう?
「…………ねぇ」
『はい?』
「バス・ショートって知ってる?」
それの答えには妙な間があった。
『___知りませんね。その方がレヴィア様に何を言ったんですか?』
「えっ、べっ別に?………なんでもない」