緋女 ~前編~



しばらくして迷うような彼の声が聞こえてきた。


『………その方、レヴィア様のこと知っていました?』

「うっ、うん。変装しててもシュティ・レヴィアだって言ってきた」

『そう、ですか』

それっきり何も言わずに数分が過ぎた。通話の時間を知らせる光が苛立たしい。



「えっと、気を付けた方がいい?」

『___わたくしには分かりかねます』

「そう」

彼はそして決意するかのように言った。



『三日後は週末です。迎えに行きます』

「うん」

『その時、その方を玄関までお連れ下さりますか?』

「えっ?あー、うん。言ってみるよ」

『お願いします。それでは』


通話時間を示す光が動くのをやめて消える。

それは確かにさっきまで苛立たしかったものなのに、今は妙に消えたことが寂しい。



なんでこんな気持ちになるんだろ?

まるで母への特別な感情に似て、それ以上に心乱される。



とても特別な感情。



『やっほー、レヴィいるー?げんきー?』


その時、突然間延びした声がドアの方からした。


全く心臓に悪い。


私はケイに対する感情を考えるのをやめてドアへとむかった。



別に、部屋に入れたいわけではない。

学年一位で特権があるとかなんだか知らないけど、女子寮まで本当に来るなんてただの変質者。


本当は放って置きたいところだが、騒がれてはまた悪目立ちしてさっきの彼女に捕まる気がした。



いつ、私は寝れるのだろう?


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