緋女 ~前編~
とはいえ、今日は結局授業らしいことしなかったし、まだ初日が終わったばっかり。
何を言ってるんだとショウに思われても仕方がない。
それに、私も学校が嫌いなのは変わらない。
学校に居れば、自分が望まない関わりも持たなければならず、同じ教室にいる人の名前は全て覚えなければいけない。
そして覚えられたからといって、何かあるわけでもない。
窮屈で、退屈で。
人の目を気にする己の臆病さを自覚するのには、ピッタリの場所。
そんな場所、二度と行けないならそれがいいと思ってた。
でも、今日それが少し変わった。
「そりゃ嬉しいね」
ショウには私の言葉が伝わってない。
でも、伝わって。
学校という場所で友達になってくれた初めての人に。
「………ねぇ、ショウ。今日、私まともに授業受けてないでしょ?」
「いきなり何?」
「私、授業サボったのも、先生を騙したのも初めてだったんだよ?」
「へー、そう」
「でも、私___ちょっと、楽しかった」
その言葉にこちらを見たショウに微笑む。
「ショウといれば、なんでもできる気がした」
私は自分の枠組みを越えたところへは行けない。
でも、ショウが私をその枠組みの外へ連れ出してくれて、そこに広がった世界に驚いた。
学校という場所を窮屈にしていたのも、退屈にしていたのも私だった。
臆病だから窮屈だの退屈だの言い訳して、その事実から逃げてしまっていた。
「ショウはさ、そのままショウの生きたいように生きてればいいんだよ」
「___生きたいように?」
「うん。私は自由なショウが好き」