緋女 ~前編~
俺が全てを失ったあの日、非女が放った言葉は公然の秘密になっている。
だから噂は全てを失い、必死で追手から逃れていた俺の耳にも自然と入ってきた。
その時に何を思ったかはよく覚えてない。
だが、いつからか思い始めたのが、その噂が本当であれば、全てを取り戻すことができるのではないかという希望。
毎日人を斬ることで生活していた俺は、やめていた勉強を独学でし始めた。昼はそういう勉強時間に使い、夜は金持ちの夫人の家に転がりこむ。
生活水準はきわめて低かったが、そうやっていつしかここまでたどり着いた。
翻るローブは国王陛下の側近である証。
だが、これを身につけるほど屈辱的なものもなかった。