緋女 ~前編~
午前はそれきりミーハーな彼女ともショウとも会わなかった。
歴史とかの授業は分からないことは多くて嫌になるけど、魔法の実戦練習はそれに比べたらよく出来てる方だ。
午後再び食堂に戻るけど、ビン底眼鏡の私に話しかける人は皆無だった。
ただショウとの噂だけはちゃんと広まっているらしく、時々こちらを見ているかと思えば指を指されたりしているのは分かった。
隣に誰もいないのは、いつものこと。
でも、今日に限って寂しく思ってしまうのは、ショウが明日という約束をするからだ。
でも、それだけではない。
この頃一人でいる時間なんてなかったせいでもあるのだろう。
次の授業まであと三十分ある。
「図書室ってあるんだっけ」
呟いて手袋を少しいじる。まだ慣れないけど使い勝手はいい。一週間もあれば、自由自在だろう。
「……あった。意外と近い」
私はそうやって逃げた。
昨日はあんなに構ってきたショウは幻のように今日はいないし、喋りかけてきてくれた彼女だって、こんな無愛想な私のことなんてもう構いやしないだろう。
苦手だなんだって言っても、今さら寂しくなるんだから仕方がない。
あー、駄目な奴。
本当に、もうどうしようもない奴だ。私は。