緋女 ~前編~


普通に恥ずかしかった。
この人のセルヴィアに対する愛は揺るぎない。

でも、この人は知っているのだろうか?


シュティ・レヴィアの母、セルヴィアはもう死んでいる。


でも、下手なことは言えない。

この人の言うセルヴィアは違うセルヴィアかもしれないからだ。

けど、ここまでの出来すぎた偶然を考えてると、この人の言うセルヴィアはシュティ・レヴィアの母だという気が私はする。


その時、彼が私の髪に一筋流れる金色の髪を見つけたのを視界の隅にとらえた。


それを掬い上げた彼が少し顔をしかめたのが分かる。


「………セルヴィア、これは?」

もうセルヴィアではないと断ろうとは思わなかった。何を言ってもこの人には通じないだろう。

でも彼の質問彼の質問には答えようがなかった。私には質問の意味が分からない。

「髪?」

とりあえず当たり前のことを答えるけど、そんなどうでもいいことではないのは、なんとなく察する。

案の定、彼の額のしわがさらによる。

「………お願いですから答えて下さい。貴女の綺麗な白銀になぜ王家の金色が紛れているんです?」

教えてくれと、懇願するような彼の声。
そのあまりの痛々しさに私はどう答えるべきかまるで分からない。


だがその言葉は私の中に新たな疑問を呼んでいた。


シュティ・レヴィアの母はセルヴィアだ。



では、父は?




目の前にいる人は確かにセルヴィアを愛してるように見えるけど、どういう仲なんだろう?


私が名前を借りているシュティ・レヴィアの父がこの人だったら、私はどうすればいい?


「答えて下さらないのですか?」

困ったような顔で、彼が呟く。



「えっ…と、あのシュティ・レヴィアって人知ってますか?」


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