緋女 ~前編~
私の中で描かれた愛されるいい子。
でも一番愛して欲しかった人は愛することなく、
私の前から消えて。
理想でいた私の偽物でしかない私は壊れていく。
ゆっくりと壊れて、カケラもなくなると
私は本物になれるのだろうか。
それともまた別の偽物になるのだろうか。
私はこの十七年間、一人称はずっと母に教えてもらった名だった。
私が私を“私”と言ったことは一度としてない。
その名を捨てるべき名として最後に記す。
私は姫という名だった。
ただの十七の少女。
ここから捨てられて落ちた、堕ちた私の愚かな恋物語が始まる。