緋女 ~前編~



「………そうだね。私もショウの言葉でお腹いっぱい」

僕の言葉にそう笑顔で頷く彼女。


心臓がドクンと跳ねた。
きっとこの病は末期だ。治療法はない。



「あっ、忘れてたけど授業始まっちゃってるよね。どうしよう?」


彼女は気を取り直したと思ったら、そう真剣に悩んでいる。

悩むくらいだったら、最初から図書室なんて行かなきゃいいのに。

ていうか、僕も妖精人間のこと聞きそびれてるし。


「先生のとこ行く?」

僕がそう提案する。
彼女を思ってというよりは自分の都合だ。


「先生ってレン先生のことだよね。またお得意の授業変更?」

「なんてったって、学校一番だからねー」


そう受け合えば、彼女はなぜか顔をしかめる。

「なんで一番なの?」 

「は?」

「ショウのファンの子が朝から煩かったんだけど」

彼女に近づく奴なんていたんだと、最初は感心して頷こうかと思ったけど、僕は朝の事を思い出した。

思わず笑ってしまう。

彼女はまた何か文句を言いたげな顔をして僕を睨み付けるけど、それさえ面白い。



「あれ、僕だよ」

そう僕は朝から彼女に会いに行っていた。


そう告げた時の彼女の驚愕の表情と言ったらないけど、一周まわって可愛い。


………なーんて、ね。


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