緋女 ~前編~
私は一瞬先生を見た。
これまで微動だにしなかった先生が、しっかりと私と目を合わせたまま一つ頷く。
私にはそれが、それでいいと言っているように聞こえた。
研ぎ澄まさせた神経で魔力をとらえるのだ。
自分の意志とは違うように思える魔力の波。だけど、よくよく考えてみれば、ケイに教えてもらって何度も練習した魔法は、ある程度制御できていた。
それに練習したのは弱い魔法だけでもない。
ならば、極限まで高めるのもコントロールする方法も、私は知っている。
それを意識的にやればいいのだ。
基本は同じ。
「…………………あっ」
魔力の波動が一瞬読めた。
その一瞬を私の研ぎ澄まさせた神経が逃さない。
身体の中を逆流するような感覚の中、自分の魔力の根源を見つける。
____これだ。
根源の魔力の解放を全神経が誘う。
「うわっ」
気がついた時には遅かった。
魔力の解放を促したまでは良かったが、予想以上の魔力の大きさに、私は制御する暇もなく全てを解放してしまったのだ。
光が視界いっぱいに広がる。
眩しくて先生が見えなくなって、私はどうすることも出来なかった。
いつのまにか瞳は閉じていた私は、光を感じなくなっても目を開けることが出来なかった。
「うそ…………っ、うそよ」
私は制御していても、学校の埋まった地下まで地面に穴を開けることができるのだ。
あれをまともに当たったとすれば、先生はもう___
「もう一度」
私にはその声が都合のよい幻聴にしか思えなかった。