緋女 ~前編~
「魔法は遺伝だ。本人たちにはどうにもできない」
その先生の言葉が私を追い詰めるようにしか聞こえない。
「じゃあ、どうして私は魔法を使えるの?」
呆然と呟くように紡がれたその言葉に、先生は私の様子がおかしいことに気がついた。
困ったような顔をする先生。
「レヴィア」
「だって、私はそもそもこの世界の人じゃない」
「誰がそんなこと言ったんだ?」
私はそれに答えようとして詰まった。
私がこの世界の人じゃないなんて、誰も言ってない。
むしろ、みんながみんな還ってきたと言う。
でも、それは今の私の外見がレヴィアという人に似ているだけの話で………
私は本当にたまたまこの世界に来てしまっただけ。
「___言ってないけど、そうなのよ」
苦し紛れに言った台詞。でも私の自信のない声音が自分自身、半信半疑になっていることを思い知らされる。
本当にたまたまなのだろうか?
母が私を捨てたあの日、私はたまたまこの世界に迷いこんで、たまたまレヴィアを求めていた王の臣下ケイがそれを見つけたの?
出来すぎた偶然。
だいたい私は偶然なんて言葉が嫌いだ。
偶然なんてものは、様々な条件が重なって必然的に起きる。
だから、私が母に捨てられるのと、この世界への入り口がたまたま時と場所同じくそろって、そこにケイがいたことで起きたのは、必然なのだ。
必然。
魔法が使える私はもう偽のレヴィアではない。
「………だってじゃあ、私は誰なの?」
「お前はお前だよ」
「そんなことが聞きたいんじゃないっ」
思わず怒鳴ってしまった私は、目を見開いた先生に罪悪感を抱いた。
先生に当たっても仕方がない。
「………教えて。シュティ・レヴィアってなんなの?」