緋女 ~前編~
確かにショウの言う通り、この国の歴史とか知って損はないだろう。
ましてや、これから一生ここで暮らすことになるのかも分からないのだ。さっきまで全く知らなかったけど、せっかく凄い学校に入れてもらったみたいだし、ここでの生活を有効的に過ごさない手はない。
「仕方がないからレヴィ、一緒に授業受けてあげるよー」
まるで心の中が読めるかのように、ショウはまたタイミング良く私にそう言った。
「………あげるって、ショウだって受けなきゃいけない授業じゃん」
「まーね」
不敵に笑って悪びれもなく頷くショウは、いっそ清々しささえ感じる。
ショウは何を考えているのか分からない腹黒少年だけど、そういうところがあるから憎めない。
「じゃあ、先生今日はありがとうございました。また教えて下さい」
「ああ」
「せんせー、あとで壁直しに来てあげるから待っててねー?」
先生は何の気なしに頷いたけど、そのムカつく間延びした声に突っ込まずにいられない。
「ショウが直せるんだったら、先生にも直せるわよ」
なんの面白みもない私の突っ込みだったけど、ショウは底無しの瞳で私を試すように射抜く。
そんなショウに囚われたかのように言うことをきかない私の身体は、蛇に睨まれた蛙のように動かない。
「レヴィア。俺に魔法はきかないが、俺は魔法は使えない」
「えっ………?」
先生の言葉に似合わず、穏やかな口調に何を言われたのか、一瞬理解ができなかった。
「魔法が使えない………?」
じゃあ、どうして体術教えられるの?
そう思った時、さっきの先生の言葉を思い出した。
”魔力のない者を一部の人は人とも認めていない“
”つまり魔法の使えない者は___
一生それをひがんで生きていく”
その言葉がいったい何を思って紡がれたのか、私は知らない。
先生は、何者?