緋女 ~前編~
“俺がいつそんなこと言った?”
彼のその瞳は嘘をついてはいなかった。
“は?だっていつも私が王子といたら怒るし、引き離すし、会っちゃ駄目って言うし。………それって、王子に対する独占欲でしょう?”
こちらも戸惑いを隠さずそう言うと、お互い混乱したまま無言でみつめあう。
だが、それほどしないで先にしゃべったのは、私の方だった。
“だから城で生きてるケイの大事な人は、絶対王子のことだと思ったのに、なんで急に怒るの?いいじゃない、ケイが王子を好きってこと、秘密だったの?”
“何言ってるんだ?”
ケイを責めるような言葉しか出てこなかった。だって私は気づいた。
“___もう、お前は信用しない”
お互いに誤解していただけなのだと。
“今日のことは忘れろ”
嫌だ。私たちは分かりあえる。
きっと、そんな苦しそうな表情しなくても、本当は良かったの____。
記憶はそこで書きかえられた。