緋女 ~前編~
空っぽだった私がケイによって満たされていったのに、説明はいらないはずだ。
でも、先にケイではなく王子、いやライサーに会っていたらどうなっていたのだろうか?
ライサーは私の特別だっただろうか?
分からない。
恋愛はタイミングが重要だ。そうとしか言えない。
「紀元前三百年、妖精の国であったこの国は最盛期を迎えた___」
授業は着実に進んでいた。
ご機嫌な先生はショウと私たちの間で交わされる視線に気づかない。
まあ、それは当たり前だ。
私が無視を決め込んでいるから。
でもだからと言って、授業を真面目に聞いているわけでもなかった。ショウは国史は受けて損はないとか何とか言っていたけど、全然頭に入ってはいかない。
私の先生はケイ、貴方だけで良かった。
貴方が教えないなら、私は何も知らなくていい。
本気でそう思った。
「紀元前五十年、妖精の時代は終わりを迎えていく___」
私はこの時、思い出した全てを闇に葬り去ることにした。
私はケイの望む私でいよう。
「我ら人間の時代の幕開けだ」
高らかな先生の宣言に、ショウは冷たい瞳で笑っていた。愚かな時代の始まりを笑ったのかも知れないし、全く別のことだったかもしれない。
ただ、私は何に関しても無関心だった。
妖精は知らないけど、良くも悪くも人間は愚かだ。