緋女 ~前編~



授業が終わった。


私が教室を後にしようとすると、ショウもついてこようとしたが、生憎あの変態先生に捕まってしまう。


そんなショウを待ってようとは思わなかった。まして助けることなど考えてもいなかった。

ショウは初めての学校の友達。
大切な友達だった。

だけど、私にとっていくらショウが大きな存在であっても、特別にはなり得ないのだ。


言うなれば、王子ライサーと同じような存在。


私は寮へと早足で向かった。
ケイに連絡をとりたい。でも、考えてみると何をどう言えばいいのか、分からない。


悶々と色々考えているように見えたかもしれないが、なんということもなく、とにかく今、私はケイのことだけしか頭になかったのだ。


そう考えると、友達がいなくても他のなにがなくても私は結局生きていけるんだと思う。それくらい私は薄情な人間なんだと笑うこともできる。


でもケイがいない世界だけは想像できない。


昨日と今日で感じていた淋しさは決してショウのせいなんかじゃなかった。

ずっと側にいた人がいない淋しさだった。


意味も分からず泣いた私は、ケイと別れた時には実感できなかった喪失感に今さら行き当たったのだろう。


今日は泣いてしまったけれど、ショウがいて、先生がいた。


でも、明日は?
明後日は?


埋まることのない心が簡単には壊れないことを、生きてきた十七年に誓って知っているつもりだ。

いくら淋しくても、泣いても喚いても、私は今週も来週も、再来週もケイが来るのを待つのだろう。



失うのが怖い。これ以上嫌われたくない。


だから、なにもしない。




最初にケイに対してそういう感情を抱いたのはいつだっただろう?


この世界に来てしまう前。母とぶつかることもせず、私はかわいそうなフリをした。




私はまた同じ過ちを犯そうとしているのであろうか?




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