緋女 ~前編~
私は言葉通り図書室に向かった。
怪物の正体が気にならないわけではないが、図書室の彼と話をすることが私にこの想いをやり過ごす知恵を与えてくれるかもしれない。
そっちの方が今は大事だった。
そこからの図書室までの道は妙に長かった。それだけ気が急いていたのかもしれない。
だが、図書室は逃げない。
手袋の図で確認すると分かる。一番奥にあるというだけで、消えてなくなってたりはしない。
魔法学校とはいえ、近代化の進んだ学校のように私は感じていた。
私の中の魔法学校といえば、もっと古めかしくてなんでも気ままに動くような生きた学校。
だが、この学校はそれと正反対で全てが死んでいるというか、とにかく生きている感じは全くしない。
よく見てみればどこもかしこも完璧で、どこか作りものめいたような印象を与えた。とても閉鎖的な空間。
一旦閉じ込められた気分に落ち入ると、とても気分がめいってしまうような場所だ。
空は青いのに偽物だ。
曇りになることはない。
きっと突然暗くなって夜になるのだ。
こんな空しい場所の一番奥の片隅で、図書室の彼はどう日々をやり過ごすことができたのだろう。
だって、さっきの妖精さんじゃ満たされないから、ずっと想ってるんでしょ?
そんなのお互い一緒にいるだけで、疲れそうだ。
そんな毎日をどうやって?
あっでも、あれ?
私、わたしは___
十七年間、やり過ごしてきたんだよね?
いったい、どうやって?