緋女 ~前編~
「…………レヴィには負けるよ」
ショウがギリギリ聞こえる程度に呟いたそれに、私はさらに笑った。
「ショウだって変わったんじゃない?」
「えっ?」
「前だったら自分が一番でさ、自分が負けたなんて冗談でも言わなかったでしょ?ほら、先生に負けたって、何度も挑戦してるみたいだし」
一瞬驚いた顔をしたショウは、次いで諦めたようなそんな笑みを見せた。
「___だから、負けなんだよ」
「えっ?」
私は首をかしげる。
「これ以上は喋んないでよ。今のレヴィに突っ込まれたら要らないこと言いそう」
「言えばいいじゃん」
私は今までそう言う話をしていたつもりなのに、ショウはまだ分かっていないのかただ首を横に振って見せた。
「その時が来たらね」
私がそれに何か言おうとした。だが、それをショウがかっさらう。
「まあ、たぶん来ないけど」
まるで、本当にこれ以上は喋って欲しくないみたいに無表情。何を考えているのか読み取れない。
だが、その打ち消しに私はまた三日月を見た。
「ショウってやっぱり三日月に似てるよね」
思わず口をついた言葉。
「は?」
「あっいや、ショウって三日月みたいに鋭くて簡単に触れないし、冷たいなーって」
適当に誤魔化して言うと、それが申し訳なくなるくらい複雑な顔をして、一生懸命こちらを見てくるショウ。
「___レヴィがそれを言う」
何度目だろう。最後は見慣れてしまった呆れたような顔になった。
「レヴィは簡単に触ってくるでしょ」
簡単に___?
私はそこで思い出した。
「………ごめん」
今までの私の態度。
謝るべきはデイリーさんだけなんかじゃない。