緋女 ~前編~



「簡単にショウに触れて傷つけたこときっと私が知らないだけで、いっぱいあったよね」


こうして謝るのはやはり自分のためでしかない。だって謝ったからって過去が消えるわけじゃないから。けど、これは私が私らしくこれからを生きていくために必要なこと。


それに私は完璧じゃないから、また傷つける。


それだって、私が何も言わなかったらショウは結局そんなことと言って許してくれる。だけど、それに私が流されるのは違う。


だから、きちんとけじめはつけるよう。


「あのね、私これからもうそうならないように気をつけるよ?けどね、たぶんこれからもたくさん知らないうちに私はショウを傷つける」

「___そうだね」


静かなショウだ。
いつも明るいショウとはまるで真逆なイメージ。


だけど、それが私には嬉しい。きっとこれが化けの皮に隠れていたショウだと思うから。


そうして気がつく。私はショウの言動に後悔も喜びも感じることができるのだと。

そうだ。


「けど、私ショウを好きなのは変わらないと思う」



ふざけた奴に見えて、底知れない野心家。それでいてかわいいところもあるショウは、私にとっては学校で初めて出来た友達。


正直、最初は意味の分からない人で戸惑ったけど、それでも一本芯の通った人物であるとは感じていた。


シュティ・レヴィアのことを知っていて、ケイと関係ありそうなのもあったけど、それを引いても仲良くしてみたくなった相手で。


今は、城で私の帰りを待っているはずの王子ライサーと同じくらい好き。


「私はショウを傷つけるかもだけど、私はショウが好きだから。それは覚えておいて」


面を食らうショウ。
なんなのさそれ、と口のなかで文句を言うショウはとても愛しい。


まあ、自分で言ってても何だか恥ずかしい台詞なのに、言われる身になったら、もっと恥ずかしいだろうし、どうしたらいいか分からないだろう。


「うっ、うんなんか、うん。ごめん。この話はやめにしよう」


私は話題を探した。

「あっそうだ」

「なに?」


「ショウが三日月に似てるの」

私がそう言うとショウは呆れたようなため息をつく。


「ちゃんと最後まで聞いてからにしてよ、ため息は」


私が文句を言うとさらにため息をつくショウ。全くわざとらしい。

でも、他に返事ができないのだろう。



さっきの“なに?”の声が少し掠れていたから。


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