緋女 ~前編~
エピローグ
それから、飛ぶように日々は過ぎ去った。
ショウはまた女になって私の寮の部屋まで来たし、レン先生の体術の授業に二人で明け暮れた。
放課後はデイリーさんのところに寄った。ショウは気に入らないみたいだったけど、私が楽しそうだったのとで何も言わなくなった。
一緒に行かないかと誘ったら断られたけど。
それにあの可愛い妖精さんはあれ以来見ていない。
デイリーさんに一回聞いたけど、顔をしかめて知らないと言われた。
正直、少し意外だった。
デイリーさんがそんな顔をすることが。
ケイとは夜、会話ともとれないような事務連絡を毎日していた。
話したいことはあるけど、いざ話そうとするとケイがそれを遮るように通話を切るのだ。仕方ない。
それともうひとつ、私には気になることが出来た。
デイリーさんが読んでもいいと言ってくれた非女の書いた本。あの本と言っていいのか分からない紙の束だ。
それを私はなんとなく、読み返している。
そして、そこに落書きがあったのを昨日発見してしまった。
ハート、そしてその上の小さな三本線。
このマークを私は知っていた。忘れようもない。
これは母のマークだ。
私が小学生になったときのこだ。母が持ち物に私の名前を書いてくれたことがあって、その私の名前の横にハートが書いてあった。
しかも、三本線がハートの上に入った、そのマークだ。
どうしてと聞いたことがある。どうしてただのハートではなく三本線が入っているのかと。
その答えはよく覚えていない。
きっと、たぶん大した理由でもなかったのだろう。
しかし、非女と母が同一人物なんてこと、果たしてあり得るだろうか。
だとしたら、私は本当にシュティ・レヴィアで___
いや、ハートの上に三本線を書く人間など、他にもいっぱいいるのだろう。
そんなことより、今日は待ちに待った週末だ。
ケイが私を迎えに来る___。