緋女 ~前編~
魔力を解除すると、鏡の破片が真っ直ぐ下に落下した。ため息が自然と出る。
何だか疲れた。
ひさしぶりにこんな強い魔力とぶつかったからかもしれない。
あっ___。
その非女の娘が自分の背後をとっていることに気づいて、慌てて振り返る。
だが、そこにあるのは綺麗な寝顔。
俺が守らなかったら危うく死んでいたかもしれないと思うと、ほっとするより憎しみがわく。
なんで俺が非女の娘を守らなければいけなかったのか。
『こんな奴、盾にしてやれば良かった』
でも、そうしたら何が起こっていたのだろうと逆に気になった。
娘を認識して鏡の破片は彼女を避けたか__?
そんな埒のあかない疑問を打ち消すように首を横にふった。
幸い彼女は軽い。
担いで持って帰ったところでそれほど疲れはしないだろうから、寝かしたままにしておくか。
なにせこれから先は彼女とはなんとか仲良くしていかなければいけない。
先ほどまでの不安は非女の魔力とともにどこかに消えた。
その代わりのように根拠のない自信がついた。
非女の娘なんて簡単だ___。
俺は知らなかった。
肩に担いだ彼女の流した涙もその理由も。
彼女のことなんて、心底どうでも良かったのだ。