緋女 ~前編~
「隠してこちらに来たのかもしれないが、俺が発見した時にはその色だった。一発でわかった。分かりやすくていいな、その髪は」
どっかりとベットに腰かけて見せた俺に、驚いた顔、いや驚いたふりをした彼女。
わざとらしく手を組んで聞いてやった。
「さて、どこまで知ってるのか教えてもらおうか?」
その素晴らしい演技で何を言い出すのか。
そして俺の言葉に自分の髪の毛を見たらしい彼女が、何か自分に言い聞かせるように言うのだ。
「………待って。この髪は違う。もともとはちゃんと黒よ。あなたと同じ」
あー、腹立つ。
俺の髪は黒じゃない。
黒が好きなわけでもない。
お前のせいだと言いたいのに我慢する。
俺の正体を明かすわけには何がどうあってもいけない。
「俺の髪は黒………か。そうか。ならそういうことにしておこう。今は」
「今は?」
つっかかってくる彼女を無視した。
「シュティ・レヴィア、なぜ帰ってきた? 目的はなんだ?」
だからだろうか、彼女もこっちの言葉を無視して言う。
「あなた、新手の詐欺師なの?」