緋女 ~前編~
その試すような挑戦的瞳。
「………どうだか」
だが、そう言いつつ私は手に持っていたカップをテーブルに置いて彼の言う通りにする。
でもだからといって彼の言うことを信じたわけでは決してない。
そう言う気持ちをこめて、彼を睨んでやってから立ち上がって窓に近寄った。
なんだか彼のいいようにされている気がしてならない。不服に思う心を落ち着かせるために彼にバレないほどの深呼吸をした。
平常心、平常心。
確かに先程は下にばかり目がいって、他は何も見ていない。
それに何かまたヒントになるものがあるのかもしれない。
しかし上を見て思った。
見なきゃ良かった___。
「なにもないじゃないっ………」
絞り出した彼への言葉。
しかし彼はとんちんかんな解答で返す。
「あと十秒で正午が終わりを告げますよ。ちゃんと見てその馬鹿な頭を納得させてあげてください」
その台詞が言い終わったすぐあとだった。
それは起きた___。